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桜の雲

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レスリー・メイヤー『新聞王がボストンにやってきた』



 主婦で新聞記者のルーシー・ストーン・シリーズ第10弾。

 今作でのルーシーは、地元のティンカーズコーヴを離れてボストンへ出張し、新聞協会の年次総会に出席します。しかし、その晩餐会で業界の重鎮が殺害されて……というストーリー。

 子供たちも夫も手のかかるストーン家なので、ルーシーが数日家を離れるとなっただけで大騒ぎ。また、家計のために贅沢をしないルーシーは、晩餐会で着るドレスも流行遅れの一張羅。家族にも自分にも不安が尽きない彼女ですが、つかの間の「ひとり」と久々の「都会・ボストン」を味わいます。

 ストーン家の台所事情は、いつだって火の車。ルーシーは自由な時間なんてまず持てない多忙な兼業主婦で、生意気な盛りの子供たちに悩まされ、ちょっと身勝手な夫に対する不満もたまっています。新聞記者といえども弱小の地方紙なので、記者の仕事とはいえない雑用も多く、また、ルーシーが外で働くことを夫は好もしく思っていません。

 夢のある要素の薄い、生活感にあふれたシリーズです。コージーというよりドメスティック・ミステリですが、同じドメスティックのクッキング・ママ・シリーズ(ダイアン・デヴィッドソン)や主婦探偵ジェーン・シリーズ(ジル・チャーチル)に比べても、ルーシー・シリーズはさらにリアリティが強い印象を受けます(どのシリーズも大好きですけれど)。

 リアリティが強いからこそ、ルーシーがかかえる悩みや置かれている状況はとても共感しやすいので、シリーズを読み進めればそれだけ、彼女やストーン一家が身近になっていきます。加えて、ルーシーの明るく純粋な人柄も魅力です。夫や子供にぶつけたい文句は山ほどあっても、彼女はいつだって、心から家族を愛しています。また、地方紙といえども憧れの記者になったルーシーが、少しずつキャリアを積んで、家庭と仕事を懸命に両立する姿にも励まされます。

 私はルーシーが大好きで、巻が進むごとに成長していくストーン家の子供たちを見守るのも楽しみでした。でも、このシリーズの邦訳は、今作の第10弾で打ち切りだそうです。本国のアメリカでは続いているのに。

 ルーシーはささやかな物事に関してもよく「にっこり」として、「すてき」と屈託なく言います。感動に対して素直で、卑屈にならない素敵な女性。もう彼女に会えないなんて、残念でたまりません。

レスリー・メイヤー『新聞王がボストンにやってきた』

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