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桜の雲

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ジョアン・フルーク『シナモンロールは追跡する』



 お菓子探偵ハンナ・シリーズの第15弾。

 季節は春で、シリーズ読者にはおなじみのホテル「レイク・エデン・イン」でジャズ・フェスティバルが開催されることに。しかし、フェスの出演者が乗るバスが玉突き事故に巻きこまれ、ハンナと妹のミシェルもその場に居合わせて――事故現場の状況描写はなかなか生々しく、このシリーズにしてはショッキングで、いかにもミステリらしい幕開けでした。

 本筋の殺人事件以上に気になるのは、美女のベヴと婚約したノーマンと、その事実に心穏やかではいられないハンナの関係でしょうか。ハンナもマイクとノーマンのあいだで揺れ続けてきたのですから、彼女にノーマンの決断をとやかく言う資格はないのでは、と個人的には思うのですけれど。

 とはいえ、シリーズ読者には予想のつく、かつ、「こうあってほしいな」という期待通りの展開になっていきます。以下、少しネタバレになりますので、ご注意ください。

 結局、ノーマンとベヴは破局を迎え、ベヴの悪女っぷりが印象づけられる流れになるわけですが。ベヴの冷酷さや狡猾さに深みがあまり感じられない点が、些か気になります。「ベヴ=悪役」なのはよいのですが、あれだけ意地悪で姑息な女性になるには、性根が歪むに足る理由があったのだろうと思いますし、その背景をもう少し詳しく知りたいな、と個人的には思ってしまいます。

 でも、ベヴは今後も登場するようなので、「人間味のある悪役」として彼女が描写されることもあるかもしれないと期待しつつ、次作も楽しみに読みます。

ジョアン・フルーク『シナモンロールは追跡する』

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