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桜の雲

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S・J・ローザン『ゴースト・ヒーロー』



 ニューヨークの私立探偵リディア・チン&ビル・スミス・シリーズの第11弾。

 今回はアート・ミステリの様相で、故人の中国人画家による「新作絵画」が市場に出たという噂をきっかけに、リディアとビルがニューヨークのアート業界を探ります。謎は天安門事件にさかのぼるので、現代のニューヨークにとどまらない、スケールの大きな物語でした。「芸術界の闇をえぐる」というタイプのミステリはとても好きなので、ストーリーは心から楽しめました。相変わらずスピーディーでテンポもよいですし、ニューヨークという街の生の呼吸も伝わってきますし、絵画と画家をめぐる謎も凝っていましたし。上質のエンターテインメントでした。

 ただ、ひとつだけ不満といいますか、今後に期待を持ち越した点もあります。以下、少しネタバレになりますので、ご注意ください。

 前作『この声が届く先』で、誘拐されたリディアをビルが身を賭して救いだしました。それにより、ふたりの絆はさらに深まったので、長らく「相棒以上恋人未満」のふたりの関係に、次作からいよいよ変化が生じるか、とわくわくしていたんです。ですが、『ゴースト・ヒーロー』でのふたりに、恋愛感情的な意味での進展や高揚はありませんでした。あくまでも表面的には見えないだけで、ふたりの濃密なパートナーシップは相変わらず堪能できるのですけれど、シリーズ1作目からやきもきしているファンとしてはもの足りなさを覚えます。

 とはいえ、「恋人同士になりそうでならないけれど、誰よりも信頼しあっているリディアとビル」をもどかしく見守り続けるのもまた、このシリーズの楽しみかたなのかもしれません。

S・J・ローザン『ゴースト・ヒーロー』

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