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桜の雲

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リンダ・フェアスタイン『墜落』



 ニューヨークの検事補アレグザンドラ(アレックス)・クーパー・シリーズの第8弾。

 ロイヤル・バレエ団に所属するプリマ・バレリーナの転落死体が、メトロポリタン歌劇場の通風筒で発見された――バレエやクラシック音楽が好きな私には、ぞくぞくしないではいられない物語でした。ロイヤル・バレエやメトロポリタンのほかに、ニューヨーク・シティー・センター等も重要な位置づけで登場します。つまり、実在する団体や施設に殺人の容疑者がいたり、そこが事件の現場になっていたりするということ。このシリーズではいまに始まったことではありませんが、「実在の機関をフィクションでここまで自由に使っていいのかなぁ」と余計な心配をしてしまいます。でも、だからこそ、リアリティが増して興味深く読むことができます。

 バレエやクラシック音楽に造詣が深いアレックスは、親友の刑事マイクからの連絡でメトロポリタンの事件を知りますが、彼女の「本職」ともいえる性犯罪の案件も既に抱えています。複数の異なる事件が同時に進んでいくため、登場人物が多いです。加えて、ニューヨークのショー・ビジネスに関する歴史や蘊蓄の描写もたっぷり。読んでいて素直におもしろいのですが、情報量が多すぎるため、私は展開を把握できなくて混乱するときもありました。

 主人公の検事補アレックスが、いわゆる「完璧な女性」なんですよね。容姿端麗かつ頭脳明晰のエリートで、本来なら働く必要のない裕福な家の出身。ラグジュアリーなマンションにひとりで暮らしていて、リゾートに別荘も持っています。「恋愛事情はぱっとしない」という点が読者の共感を誘うポイントなのかもしれませんが、私はつい、「既に充分すぎるほど恵まれているのだから、恋も成就させたいなんて贅沢」と卑屈な目で見てしまいます。まあ、アレックスは色恋にがつがつせず、古傷や片想いに悩んでもいるので、そういう部分には親近感をいだけるのですけれど。

 アレックスはスコッチ・ウイスキーが好きで、なかでも「デュワーズ」を愛飲しています。私事で恐縮ですが、私はお酒をやめたのですけれど、このシリーズを初めて知った頃は習慣的にお酒を飲んでいました。当時はアレックスの真似をして、バーでデュワーズを注文することもよくありました。いまでもこのお酒のボトルを見るとアレックスを思いだして、なんとなく嬉しくなります。

 ところで、2008年に刊行されたシリーズ第10弾『焦熱』を最後に、邦訳がとまっているようですね。本国のアメリカではシリーズが続いているようなので、邦訳を再開してくれるとよいのですが。

リンダ・フェアスタイン『墜落』

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